サエズリドコロ

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10/6 彩ふ読書会大阪・午前の部「推し本会」感想

10/6 ののの彩ふ読書会、午前と午後の部に参加しました。
場所は漫画読書会の時と同じ会場です。ようやく顔見知りの方も増え、馴染めてきたのかなと思えてきました。
 
午前の部は通常通り「推し本紹介」
3つのグループに分かれて、1グループ7~8名の構成で、一人ずつ推し本を紹介していきます。
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私はAグループでした。メンバーは、私を含めて7名です。主催者の男性、進行役のサポーターの女性(漫画の時も進行してくださってた方です)、大阪サポーターの男性、京都サポーターの男性、今回が二度目という女性、初参加の男性、私。す、すごい。なんという万全のサポート体制なテーブルでしょうか。私が脱線してもきっと軌道修正してくださるに違いない、と一気に安心っしてしまいました。というか、暴走するリストに入っているのでは。

簡単な自己紹介をしてから、いよいよ本の紹介です。

まずは、進行役の女性の推し本。
「淋しい狩人」宮部みゆき
東京下町で古書店を営むおじいさんが語り手の短編集。バイトで手伝ってくれるお孫さんもでてきます。語り手が眉目秀麗な男性や女性のキャラの小説は、たくさんあるけれど、おじいさんというのは珍しいし、それゆえに少しビターな味わいの小説であるとおっしゃっていました。本にまつわるミステリで、短編から成るので、宮部みゆき入門小説としておすすめ、ということです。一番のおすすめは6つのお話の中でも「うそつきラッパ」だそうで
これまた、そそられるタイトルだなあ、と思いました。それにしてもタイトルだけでは気づかないとはいえ、図書館や古書店が舞台の小説を狂ったように読んでたくせに、これが未読って悔しいわ、と心の中で歯ぎしりしたことを明記しておきます。……いや、口に出してたか、出してたわ。


二番手は私の推し本。
「下鴨アンティーク」白川紺子
はい、八月に下鴨神社へ行ったのを機に、読み返していたシリーズを紹介しました。地理に明るくなってから読むと、浮かぶ情景がよりリアルに感じられて、聖地巡礼の大事さに目覚めた!などと熱弁したり、「イケメンが!イケメンが!」と壊れたおもちゃのごとくわめいた記憶しか残っておらず、ああ、私はこの本の面白さを、ちゃんと伝えられているのだろうかと、反省しきりです。
それはさておき、このシリーズは、亡くなった祖母から譲り受けた蔵に収められている着物、それも、持ち主たちの情念が宿って不思議な現象を起こす着物を、元通りにしていく女の子の話です。
ある着物では描かれた花の色が変わってしまったり、消えてしまったり、あるいは着物をだした途端、幻の雪が舞ってきたり、小さな子供の声が聞こえてきたりします。それらを、解決に導くために、本人や親せきに話を聞き、帯や帯留めを組み合わせて着ることで、現象を鎮めていくのですが、その解決のアイテムのヒントになるのが、書物や歴史、詩歌にあるのが、なんとも読書家の心をくすぐります。文学部や暦文などを履修した方は、二倍三倍楽しめるはず、と紹介しました。

三番手は京都サポーターの男性の推し本。
「瓶詰地獄」夢野久作
ドグラ・マグラなどで有名な夢野久作ですが、お恥ずかしながら未読でした。文豪作品は、旧仮名使いであったり、文庫の文字も小さめだったり、とっつきにくいイメージを持っていたのですが、彼が持ってきた「瓶詰地獄」は表紙からしてとても耽美な本でした。「乙女の本棚」シリーズというもので、この本のほかにも3冊ほど見せていただきました。彼は文字のみで読んだそうなのですが、イラストを見ながらだと、想像とまったく違う印象になったとおっしゃっていて、視覚から入る情報の強さってすごいなと思いました。文学作品を読むきっかけにになるのなら、アリだな、と一同頷きましたよ。そして、主催者の男性のクリティカルな質問が炸裂。「初めて読むなら、イラスト入りと文庫、どちらがいいですか?」
先ほど、文学作品を読むきっかけに、と思ったのですが、うなりました。いや、先にイラスト入りを読んだら、確実にイメージついてしまう、自分の想像の「瓶詰地獄」を見たい気もするし、でもこのイラストは抗いがたいほど、耽美で世界観がいい、と悩ましい気持ちになってしまいました。

四番手は大阪サポーターの男性の推し本
「大相撲殺人事件」小森健太朗
いわゆる、バカミスです、という一言から始まったこの本の紹介は、今回の推し本紹介で一番笑ったものでした。まず、アメリカから留学してきたはずのマーク青年がどういうわけか相撲部屋に入ることになり(!)そこで殺人事件がおきてしまう、というあらすじ。力士の40%が死ぬという異常事態の中、マークは不戦勝で勝ち上がっていくらしいのです。なんといっても、「はっけよおい、のこった!」の直後、土俵上の力士が爆死する、というエピソードは、笑いとどよめきが起こりました。もう、「どういうことやねん!」の連続です。しかも、この殺人事件、マークが有利になるような展開になっているらしく、犯人やトリックいろんなことが気になる作品でした。これだけはちゃめちゃにもかかわらず、読んだ後はちょっぴり相撲に詳しくもなれるそうで、一粒で二度おいしい小説ですね。いや、バカミスって言葉も初耳でしたわ。

五番手は参加二度目の女性の推し本。
ジーヴスの事件簿」P・Gウッドハウス
ロンドンが舞台の、ミステリ短編集。ホームズよりも少し、ライトで読みやすい感じと紹介されていました。のんびりしたボンボンである主人が巻き込まれる事件簿を解決するのは、彼に仕えるベテラン執事です。それを聞いて、国内の色々な執事ものを思い出したメンバーから「黒執事」「謎解きはディナーの後で」みたいな感じ?とぽぽん、と出てくるのは、さすがというか、皆さん一通り、読んでるなあ、と感じました。「主人と執事の関係性ってどんな感じですか?執事が絶対服従の感じなのか、それともちょっと立場的に執事のほうが上な感じ?」と質問。「後者です。」とのお答えでしたので、会話も楽しめる小説なんだろうな~とベテラン執事の鮮やかな推理を見てみたくなりました。どんな珍事件にご主人が巻き込まれていくのかも、興味がわきます。

六番手は初参加の男性の推し本
「丸太町ルヴォワール」円居 挽
主人公の青年が目の病気療養で滞在していた祖父の屋敷で、祖父が殺される事件が起きる。容疑をかけられた青年は、その時「ルージュ」という謎の女性といた。嫌疑を晴らすためではなく、もう一度彼女と会いたい、というだけの理由で、でたらめな裁判がなぜか京都御所で開かれる、というなんとも奇想天外な小説。
時間かせぎにわざと嘘の証言や証拠をでっちあげたり、裁判員を味方につけて有利に裁判を進めたり、という展開だそうで、「逆転裁判」みたいだな、と誰かがおっしゃっていたのですが、私は
「シカゴ」という映画を思い出しました。容疑者の女性二人が、陪審員や裁判官を、色仕掛けや泣き落としで味方につける法廷ものだったと記憶しているのですが。シリーズで、烏丸ルヴォワール、河原町ルヴォワールなど、京都を舞台にした小説らしく、「なんで丸太町?」の疑問に「裁判所が近いからじゃないかな」とさりげなく答えてくださっていたり、京都御所での裁判、と言われて、「それで丸太町か!」と納得されていて、地理って大事だわ、の結論を再認識しました。

最後は主催者の男性の推し本。
「ロマンスの辞典」望月竜馬
午後の課題本「ILoveYouの訳し方」の作者でもある望月竜馬がいろんな言葉をロマンチックにしてみよう、という辞典です。どんなに色気のかけらもない単語でさえ、思わず歯が浮くような言い回しで表現された語句の数々。思わず全員身を乗り出して、いろんな言葉を調べだす始末。しかもあえて「きらい」「りこん」などロマンスから縁遠い言葉ばかりをチョイスする我々。あげくのはてには「かつおぶし」。そ、そんな言葉までロマンチックになってしまうのか!?と目を疑いますが、なります。なっています。全部の語句を調べてきゃっきゃっうふふしたい一冊でした。辞典のお話つながりで、最近はいろんなのがあるよね、という話になり、「悪魔の辞典」や「大和言葉の辞典」など面白そうな辞典のタイトルが出てきて語彙力アップ目指したくなりました。

私がもたもたしていて、本の写真はAテーブルのものしか撮れておりません。他のテーブルの詳細は、他の方のレポを楽しみにしておこうと思います。忘れないうちにと思って記憶を拾い集めただけのレポですが、楽しかった!この楽しさが伝わりますように~。
午後の部は、課題本、そして初の試み実験的読書会の様子を書くのですが、え、あれ、まとめることなんてできるのかしら……。あらゆる意味で、カオスです。